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「予防法務超基礎編」では、法律家にとっては、基本中の基本の話なのですが、企業の法務部門向けの本などでは、あまりにも基本的すぎて、なかなか触れられていないながらも重要な事項について触れていきたいと思います。スタートアップ企業やベンチャー企業など、創業して間もない企業や小規模で法務部門が整っていない企業などは、参考になるかと思います。
さて、今回は、「相手の特定」についてです。
企業が活動する場合、必ず「相手」が登場します。商品や原材料を仕入れる場合もそうですし、その加工や製造を委託する場合もそうですし、完成品などを販売する場合も、必ず相手が必要となります。
もしその『相手」が実在しなかった場合、どうなるでしょうか。つまり、取引等の相手が架空の名称を用いていたり、あるいは偽名を用いていた場合、どのような問題が生じるのか、ということになります。
取引が上手くいっているときは、それでも問題はないかもしれません。しかし、何らかの理由で、相手に対して訴訟を提起する必要が生じた場合、名称や氏名が不明な相手に対しては、原則として、訴訟を提起することはできません。
訴訟を提起する場合、訴状には当事者を記載する必要がありますし(民事訴訟法133条2項1号)、訴状は被告に送達することになるのですが(民事訴訟法138条1項)、相手の名称や住所が不明である場合、これらを行うことができません。
そうすると、生じてしまったトラブルを解決できず、泣き寝入りせざるを得ない、といった事態に陥ってしまいます。
企業経営をしていると、いろいろな方に出会うでしょう。その中には、悪意を持った者もいるかもしれません。特に、スタートアップ企業やベンチャー企業については、その傾向が大きいものと考えられます。
せめて、初めて取引する相手については、その名称や氏名、所在や住所等を必ず確認し、その内容を記録するようにしましょう。
どのように確認すればよいかと言いますと、公的な登録事項を確認することが有効です。
相手が法人の場合には、その法人の登記簿謄本(全部事項証明書)や登記情報を確認することが確実です。その法人のウェブサイトだけでは、そこに記載されている内容が真実に合致しているのか定かではないので、不十分といえます。
相手が個人の場合には、運転免許証や住民票、戸籍謄本などが考えられます。それらで住所等を確認できさえすれば、相手が住所を変更した場合でも、それを追跡することができます。
確認だけではなく、必ずそのコピーを取って保管ないし保存しておいてください。
ちなみに、「相手」の特定にあたっては、必ず、氏名や名称だけではなく、所在地や住所も必ず確認する必要があります。上記のように、住所が不明である場合には、送達が困難という問題がありますし、何より同一の法人名である場合や同姓同名の場合もあり、特定や識別が困難となる場合があるからです。
将来の紛争予防のためには、以上のことを気をつけてみてはいかがでしょうか。
<結論>