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予防法務超基礎編その3〜契約書の作成〜

「予防法務超基礎編」では、法律家や企業の法務部に勤務する方などにとっては基本中の基本の話であり、当たり前すぎて企業法務に関する本などでもなかなか触れられていないものの、重要な問題を含む事項について触れていきたいと思います。スタートアップ企業やベンチャー企業など、創業して間もない企業や小規模で法務部門が整っていない企業などは、参考になるかと思います。

さて、今回は、「契約書の作成」についてです。

皆様は、他の会社や個人と取引する場合、契約書を作成しているでしょうか。大企業では契約書を作成するのが当たり前ですが、中小企業やスタートアップ企業などは、口頭でのやりとりのみで、きちんと契約書を作成していない場合も多いかと思います。しかしながら、契約書はとても重要な意義をもっています。

私が考える契約書の意義のうち最も重要なことは、裁判所で重要な証拠となるということです。

たとえば、ある物の売買契約を締結したにもかかかわらず、相手が「そんな契約は締結していない」と言って物の引渡しを拒否してきたとします。
このように当事者で紛争が生じてしまった場合、裁判所に訴訟を提起する必要がありますが、裁判では、争いがある事実は証拠がないと認定されません(民事訴訟法179条)。そして、立証責任は契約の成立を主張する側が負っています。
したがって、上記の例で物の引渡しを求める場合には、売買契約の成立を示す証拠を提出する必要があります。
ここで必要になるのが契約書です。

契約書がない場合、裁判所は契約の成立を簡単に認めてくれません。よく「証人がいるから大丈夫」と安心されている方がいますが、人の記憶は曖昧なので、証人の証言だけでは認定してもらえないことが多いです。裁判所は人的証拠は重視せず、契約書のような物的な証拠を重視する傾向にあるのです。
のみならず、契約書がないと、「そんなに重要な契約なのに、契約書を作成していないのはおかしい」として、契約の成立を否定する方向で考えられてしまう場合もあります。

以上のように、契約書には証拠として重要な意義をもっていますが、その他にも、契約内容を明確化する意義、当事者の予測可能性を確保する意義など、重要な意義があるかと思いますので、できる限り契約書を締結するようにしましょう。
もし契約書を締結できない事情がある場合には、要点だけをまとめた簡単な合意書や覚書を作成することでも構いません。

なお、契約書を作成した際には、必ず、相手に署名または押印してもらうようにしましょう。
相手の署名や押印がない場合、相手の承諾なく勝手に作成した文書であるとして、証拠価値が認められませんん。
もし重要な取引であれば、相手に実印を押してもらったうえで、印鑑証明書の交付も受けましょう。印鑑証明書があれば実印かどうかを確認できますし、本人しか発行してもらえないものなので、これを交付してもらうことができれば、通常、相手が自らの意思で押印したと認められ、裁判所で、契約の成立が認定される可能性が格段に高まります。


<結論>

  • 取引をする場合、必ず契約書を作成するようにしましょう。
  • 契約書には、必ず相手に署名または押印してもらいましょう。重要な取引では、印鑑証明書をもらうこと方が安全です。

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